英語で読む ハリーポッターとアズカバンの囚人 第13章-1「カンカンに怒る」

do one’s nut はイギリス英語で「カンカンに怒る」。この nut が指すのは木の実じゃなくて、人間の頭部です。これがアメリカ英語だと go ballistic と、一気に現代的な表現に変わるというのも、かの国らしいですね。

明日は、当たるところ敵なしだ!

‘I can’t see what’s going to stop us tomorrow!’ said Wood.
Harry Potter and the Prisoner of Azkaban, P.189 Line 18

ファイアボルト効果でクィディッチの練習も完璧に決まり、意気軒昂のウッド。

ところでタイトルは日本語版からの引用なのですけれど、「向かうところ敵なし」じゃないのですっけ(・・?)

所当無敵

と思いつつググッてみると、史記の中の『項王の最期・項王自刎』(の書き下し文)にそういう表現があるようです・・・。

「吾公の長者なるを知る。
吾此の馬に騎すること五歳、当たる所敵無し
嘗て一日に行くこと千里なり。
之を殺すに忍びず。
以て公に賜はん。」と。

ま、該当箇所の漢文が「所当無敵」ですから、書き下せばそうなりますよね。

以下、気になる方のために、その現代語訳です。

「私はあなたが高徳の人であることを知っている。私はこの馬に5年間乗ってきたが、当たる所敵無しであった。かつて、一日に千里走ったこともあった。とても殺すには忍びない。あなたに与えよう」と。
古典のテストで、項王の最期というお話なんで… – Yahoo!知恵袋

古典(漢文)なんていつぶりカナ・・・。

ちなみにグーグル検索では、
“当たるところ敵なし” の検索結果 約 495件
“向かうところ敵なし” の検索結果 約 218,000件
なので、当たるところ敵なし はかなりマイナーな表現ではないかと。

ハリー、吸魂鬼の問題は解決済みだろうな?

Harry, you’ve sorted your dementor problem, haven’t you?
Harry Potter and the Prisoner of Azkaban, P.189 Lines 19, 20

上記に引き続き、ウッドのセリフ。

sort といえば「並べ替える」ですけれど、ここは「片付ける」「修理する」の意味。

US版ハリポタでは、sort → sort out という微妙な変更が。

Harry, you’ve sorted out your dementor problem, haven’t you?
Harry Potter and the Prisoner of Azkaban

いやでも、sort から「片付ける」という意味を探し出すより、sort out から「解決する」を探すほうが数倍ラクです。

US版マンセー(笑)

ダンブルドアがカンカンになるからね

‘The Dementors won’t turn up again, Oliver. Dumbledore’d do his nut,’ said Fred confidently.
Harry Potter and the Prisoner of Azkaban, P.189 Lines -18, -17

ディメンターが再び城内に現れるようなことがあれば、ダンブルドアが黙っちゃいないよというフレッド。

do one’s nut

do one’s nut はイギリス英語で「カンカンに怒る」。

The Word Detective さんによると、

Of the two phrases, “to do one’s nut” is closer to other figures of speech that are probably familiar to Americans. The word “nut” itself is very old, derived from the Indo-European root “knu,” which meant simply “lump.” While for most of its subsequent history we used “nut” to mean peanuts, cashews, etc., it also developed a range of figurative meanings, one of which was, in the mid-19th century, “the human head.” This led to the slang use of “nut” to mean “a crazy, eccentric or obsessive person,” as in “lone nut” or “football nut,” as well as “nuts” or “off his nut” to mean simply “crazy.” By around 1919 in Britain, the phrase “do one’s nut” had become popular, meaning “to become extremely angry” (“I thought what Grace would say, that she’d do her nut maybe. But she didn’t blink an eyelid,” 1972). Why “do”? There probably isn’t a particular reason, aside from the fact that “do” conveys decisive action, as in an explosion of anger. After all, the “go” in “go nuts” doesn’t really mean you go anywhere.
Do one’s nut & go spare – The Word Detective

超訳:

ここで使われてる nut はいわゆるナッツのことではなくて、人間の頭部のこと。do one’s nut という表現は1919年頃にはイギリスでよく耳にするようになってたが、なぜ do なのかについては、do が断固とした行動を示すのに使われるという点を除けば、特段の理由はないと思われる。

最後に書かれている go nuts も似たようなイディオムで、「怒り狂う」「興奮する」という意味です。

go ballistic

一方、US版ハリポタはというと、

‘The Dementors won’t turn up again, Oliver. Dumbledore’d go ballistic,’ said Fred confidently.
Harry Potter and the Prisoner of Azkaban

ミニットマンIII 大陸間弾道弾ミサイル

ballistic はアメリカの俗語で「カンカンに怒った」という意味。

ballisticてなんか聞き覚えがあるなぁと思ったら、最近某国の発射したミサイルが intercontinental ballistic missile = ICBM 「大陸間弾道弾ミサイル」で、よくニュースで流れてたのでした。

この場合の(というか通常の) ballistic は「弾道(学)の」という意味です。