Boggart by the bed, 出典 The Stranger's Bookshelf

英語で読む ハリーポッターとアズカバンの囚人 第7章-3「ランカシャーのボガート」

自身は特定の形を持たず、相手が一番怖いと思うものに姿を変える shape-shifter のボガート。

ランカシャー地方の民間伝承に「形態模写」的なボガートが登場すると聞いて、1867年出版の本に突撃してみました!(・∀・)

心配しなくても大丈夫だ。中にはボガートが入ってるんだ

‘Nothing to worry about,’ said Professor Lupin calmly because a few people had jumped backward in alarm. ‘There’s a boggart in there.’
Harry Potter and the Prisoner of Azkaban, P.101 Lines 2, 3

クローゼットに入り込んだ『まね妖怪』ボガートを使って、「闇の魔術に対する防衛術」の実地訓練をやろうというルーピン。

ボガートのなんたるかについては説明するまでもないと思いますけど、いちおうハーマイオニーの模範解答を。

「形態模写妖怪です。わたしたちが一番怖いと思うのはこれだ、と判断すると、それに姿を変えることができます」
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人, P.175

なお、以下、目次が突然英語になってますが、深い意味はありません(^_^;

What is Boggart?

神話・伝承好きなJ.K.R.さんのこと、当然ながらボガートも彼女の完全な創作ではなく、背景にイギリスの民間伝承があります。

ケルト族の神話では、ボガート(Boggart)はいたずら好きだがときに人間を助けてくれる。家に住む精霊である。別名ボーガン(Bogan)またはボーグル(Bogle)。ボガト、ボガン、ボグルとも。

イギリスの民間伝承で、ボガートは屋敷に憑く霊で、それにより物体が消滅したり、牛乳が酸っぱくなったり、犬がビッコになったりする。常に悪さをし、どこへ逃げてもついてくる。少なくともイングランド北部では、ボガートに命名してはいけないことになっている。ボガートが名を得ると、理不尽で説得することのできない、手に負えない破壊的なものになる。

ボガートは夜間寝ている人に忍び寄り、冷たい手を顔に当てると言われている。敷布を剥がしたり、時に耳を引っ張ったりする。
ボガート – Wikipedia

ただし、イギリス各地の民間伝承に出てくるボガートは人形(ひとがた)だったり、巨大な馬だったりと、そのほとんどが有形ですが、ハリポタのそれは shape-shifter:変幻自在である点が異なります。

 

が、英語版の Wikipedia によると、

The boggarts of J. K. Rowling’s Harry Potter series are shape-shifters whose true form is unknown, unlike most boggarts of British folklore. Their closest parallel, in being able to change shape at will, is probably to be found in a reference to a Lancashire boggart in the book Lancashire Folklore of 1867.
Boggart – Wikipedia

1867年に出版された『ランカシャーの民間伝承』の、 ”ランカシャーのボガート” に関する記述に、ハリポタのボガートとの類似点が認められる とのこと。

ってなわけで、その『ランカシャーの民間伝承』とやらに突撃してみましたヨ!

Lancashire Folk-lore

ダラダラと文字が続いてしまったので、息抜きに Lancashire Folk-lore のカバーイメージをどうぞ。
Powered by Amazon (笑)

内容は二部構成で、

  • PART I   迷信、魔法、魔女、占い
  • PART II  地方のならわし・風習

PART I の目次を抜き出すとこんな感じです。

P A R T I.

SUPERSTITIOUS BELIEFS AND PRACTICES.
CHARMS AND SPELLS.
THE DEVIL, DEMONS, &c.
DIVINATION.
MISCELLANEOUS FOLK-LORE.
MIRACLES.
OMENS AND PREDICATIONS.
SUPERSTITIONS, GENERAL AND MISCELLANEOUS.
WITCHES AND WITCHCRAFT.

注)&c. は etc. のこと。 & はラテン語で et

CHARM だの DIVINATION だの OMEN だの、ソソるキーワード満載ですね(*´д`*)
読んでみたい。日本語でww

ちなみにおためし版PDFが以下からゲトできます。
Lancashire Folk-Lore – www.forgottenbooks.com

約10ページに1ページの割合で本文の内容が広告に差し替えられてますが、気になる方はチェックしてみては?

the shape-shifter boggart in the Lancashire Folk-lore

というわけで、「変幻自在なボガート」に関する記述に話を戻しますと、PART I. の第1章にあたる SUPERSTITIOUS BELIEFS AND PRACTICES の中の BOGGARTS OR GHOSTS IN OLD HALLS. に、それらしいことが書かれていました。

BOGGARTS OR GHOSTS IN OLD HALLS.

(snip)

Even since the formation of the new road, J.W —–, the last of the ancient race of boggart-seers in the township, used to combat with feeorin’ between East End and Droylsden toll-gate; but as he died a few years ago without bequeathing his gift, he (happily) carried with him his mantle to the grave. At a period just within memory, oft, after sunset, has the weary and tardy pedestrian quickened his speed on approaching some lonely place, by remembering how its tutelar spirit or Boggart could assume at will the shape of a rabbit, dog, bear, or still more fearful form.
Lancashire Folk-lore

超訳:

古い建物に棲むボガートあるいは幽霊について(中略)

新しい道が出来てからも、ボガートバスターの末裔たるJ.W氏は相変わらずイースト・エンドとドロイルスデンの料金所の間でフィーオリンとの闘いに明け暮れていた。しかし彼はその力を誰にも継承することなく、数年前にこの世を去った。(幸いにも)ボガートバスターとしての責任まで一緒に棺桶の中に持っていってしまったのである。その記憶もまだ生々しい頃、日の暮れた後にうらさびれた場所を通るときは、疲れきった人々も足取りを速めた。その土地の守護霊やボガートが、うさぎや犬、熊、あるいはもっと恐ろしげなものに化けて出ると知っていたからだ

訳注:

  • 新しい道(the new road)とは、恐らく1826年にマンチェスターからドロイルスデンを通ってアシュトンまで開通した道のことを言っているようです(Township Information – Droylsden)。
  • フィーオリンとは妖精の総称。人間に対しては親切で(少なくとも敵対的ではない)、歌や踊りを好む(Feeorin – Encyclopedia Mythica)。
    そも combat するような相手なのか?? 違う解釈があるのかも知れませんね。

 

しかし、結構苦労してたどりついた割には、肝心の shape-shifter の部分はあっさりしてましたっ(>_<)

 

長くなってしまいましたので、次回に続きます。

英語で読む ハリーポッターとアズカバンの囚人 第7章-4「ラドクリフ塔のブラック・ドッグ」
ハリポタを読む じゃなくて、『ランカシャーの民間伝承』を読むブログになっちゃってますが(*´д`;)…前回に引き続き Lancashire Folk-lore から、ラドクリフ塔に取り憑いていたというブラック・ドッグをご紹介。